ブームスラング

このブームスラングという蛇。可愛い感じですが実は恐ろしい毒を持っているんです。(Photo by gundy)

生態

Boomslang(ブームスラング)と呼ばれるこの蛇は、大きい目に鮮やかできれいな色をしたかわいらしい外見ですが、強力な毒をもっています。

ブームスラングはサブサハラアフリカ(サハラ砂漠よりも南のアフリカの地域)に生息しています。この蛇は、性別によって形態が異なる「性的二型性」という特性を持っていて、メスは主に茶色ですが、オスは緑や黄からピンクがかった赤まで様々な鮮やかな色をしています。若いものは緑色の目をしています。ほとんどの時間を木の上で過ごし、トカゲ、カエル、カメレオン、ネズミ、鳥などを食べます。

かなり大人しく、攻撃性が低い性格です。飲み込めないような大きさのものがやってくるとすぐに逃げて行ってしまうと言われています。「後牙類」という、牙が口の後ろの方にあるタイプの蛇であることから、相手を噛んで毒を注入するためには170度ほど口を大きく広げなければなりません。こういった理由から、強力な毒を持ってはいるものの人が噛まれる可能性はやや低く、これまでに記録されているブームスラングの毒による死亡例は世界で10人以下であるそうです。

ブームスラング
Photo by William Warby via Wikimedia Commons

強力な毒

ブームスラングは1950年代までは無害であると思われていました。1957年9月26日、有名な爬虫両棲類学であるカール・P・シュミット氏がブームスラングの毒によって死亡しました。記録された中では初の死亡例です。彼は、若いブームスラングの入った袋を開けようとしていたところ親指を噛まれました。当時は強力な毒があることが知られておらず、さらにブームスラングの毒が効いて来る為には数時間の時間がかかるため、彼は噛まれたことを大して気にしませんでした。しかしながら、彼はその後出てきた症状を事細かに記録していました。そして噛まれてから約24時間後、呼吸停止と重度の脳出血によって彼が自宅で死亡しているのが発見されたのです。

ブームスラングの毒は「血液毒」と呼ばれるタイプのものです。赤血球の破壊や血液凝固の阻害が起こり、組織や内臓が変性します。そして筋肉や脳から出血を起こし、歯肉や鼻孔を含めた体中のありとあらゆる穴から血が流れ出てきます。体中で内出血が起こるので、体が青くなることもあります。内出血はとてもゆっくりと進行していくため、死亡までには5日ほどかかることもあるそうです。

今は抗毒素が存在しており、毒の効きも遅いことから、噛まれてもすぐに治療を受ければ心配する必要は無いそうです。ただし、毒があることを知らないとその対処もできないので注意しましょう。


参考文献:This snake's venom makes you bleed from every orifice until you die | Running Ponies, Scientific American Blog Network, Deadly Boomslang Snake Venom Makes You Bleed From All Of Your Orifices Until You Die | IFLScience