ハルキゲニア予想図

今から5億4200万年前に生きていた、このハルキゲニアという生物。一般的な生物のイメージからあまりにもかけ離れたこの形によって謎が多かったのですが、最近の研究で少しずつその生態が明るみになってきた様です。(Photo by Elyssa Rider via Phys.org)

古代生物ハルキゲニアの生態

ハルキゲニア(Hallucigenia)は、カンブリア爆発と呼ばれる約5億4200万年前の生物の進化が爆発的に起こった時代に生きていました。ほとんどの今の動物のグループはこのときに出現したと考えられている時代です。

体長は3~5センチで、海の底で生活していた海洋生物です。背中にトゲ状の突起を持ち、7か8のペアの足があり、その先には爪が付いています。

科学者たちが40年前に初めてハルキゲニアの化石を分析した時、そのあまりにも地球上の生物とはかけ離れた風貌から現在の生物のどのグループに属すのかも分からず、体の前後・上下さえよく分かっていませんでした。ハルキゲニアは進化上の“一発屋”として消え去った生物であり、現代にそれに繋がる子孫は残されていないとの見解さえあったそうです。

しかしそれから40年経った今、ケンブリッジ大学の研究者たちによってハルキゲニアの子孫が発見された可能性があるとの発表がなされました。その子孫とはOnychophora(有爪動物)と呼ばれる生物で、熱帯雨林に住む小さな足を持ったミミズのような生物のグループです。

ハルキゲニアと有爪動物の類似性は全部で5つ確認されました。その中で特に重要なものが肢の先にある爪の仕組みです。電子顕微鏡による研究で、ハルキゲニアの爪の上には2~3層のキューティクル(外被、表皮)が積み重なっていることが分かりました。この仕組みによって、脱皮後に爪が生え揃うのを待つ必要がなくなると考えられています。ケンブリッジ大学のマーティン・スミス博士によると、これと似た特徴が有爪動物の爪と顎に見られ、他にこの特徴を持つ動物はいないとのことです。

また、今回の研究ではハルキゲニアの前後・上下もほぼ確定された様です。前方に二つか三つの付属器官がそれぞれペアで付いており、丸くなっている後方にはおそらく内臓が入っていたと予測されています。かつて竹馬のような足だと思われていたトゲは、足ではなく外的から守るためのものであるとされています。


参考文献:Hallucigenia revealed: The most surreal creature from strangest period in history of life on Earth - Science - News - The Independent, Worm-like creature with legs and spikes finds its place in the evolutionary tree of life