ニューヨーク、Top of the Rock

山奥のクモは元気にのびのびと大きく育っているように思えてしまうものですが、同じ種類の中では都会のクモの方が大きく育つということが発見されました。

研究の内容と結果

コガネグモ科の Nephila plumipes は、アジア太平洋で一般的に良く見られるクモです。シドニー大学のエリザベス・ロウ氏は、シドニーの都心部にいるその種類のクモは一般的な大きさよりも大きいことに気がつきました。彼女は、そのことに都会という環境が関係しているのではないかと疑い、研究が始められました。

研究者たちはシドニーにある様々な研究用地から雌のクモ222匹を集め、それらの大きさ・重さ・卵巣の大きさなどを測定しました。

その結果、自然の多い地域よりも都会で採取されたクモの方が大きいということが発見されました。都心部で採取されたクモは平均1.6グラム。その一方で、茂みの地域で採取されたクモは平均わずか0.5グラムだったのです。さらに、都心のクモは卵巣も著しく巨大だったとのことです。

なぜ都会のクモは巨大化するのか

この原因について研究者たちは二つの理由があると予測しています。それは、気温の高さと餌の捕り易さです。

まず、都会は表層面が固く植物が少ないので田舎よりも気温が上昇しやすい傾向にあります(ヒートアイランド現象)。ほとんどの無脊椎動物は気温が高くなるとサイズが大きくなることが分かっているので、都会の高い気温がクモの巨大化の原因の一つである可能性があると言えるのです。

次に、都会の照明には虫がよく引き寄せられます。都会のクモはこういった照明のある場所に巣を仕掛けることで、多くの虫を捕ることができるのだと考えられます。

奇妙なことに、富裕地域でもクモは大きくなることが観測されました。これについては研究者たちも首を傾げますが、おそらくは都心と同じく植物の少ない固い表層面による気温上昇が原因であると予想されています。

この研究で調査されたのはシドニーの地域だけですが、研究者たちはこれは世界的に起こっている現象であると考えています。

気温が上がると巨大化するとは言うものの、高くなり過ぎるとクモは死んでしまいます。実際、去年の猛暑でシドニーでは多くのクモが死んだそうです。それでも現在のシドニーのクモの数は正常な値まで戻っており、そのことは喜ばしいことであるとロウ氏は言います。

留意する点としては、これは「同じ種類の中では」都会のクモの方が大きくなるという研究結果であるということです。種類によってその標準となる大きさは変わってくるので、全ての種類をひっくるめて比べればやはり山奥のクモの方が大きいとも言えるのかもしれません。もちろんその逆も有り得ますし、国や地域によって生息している種類も大きく変わってきますので一概には言えません。

気持ち悪がられることの多いクモですが、ほとんどのクモは人間には無害であり、さらに他の害虫を食べる益虫としても知られています。自然の多い環境ではもとより、都会でもクモは重要な役目を果たしているのかもしれません。


参考文献:Cities Are Making Spiders Bigger | IFLScience, Cities are breeding bigger spiders, say scientists, but that's definitely a good thing - Science - News - The Independent, Swelling Australian cities harbour ever bigger spiders - life - 21 August 2014 - New Scientist