宇宙空間

人間が宇宙服無しの状態で宇宙空間に出てしまうとどうなるのでしょうか?長時間生きてはいられないであろうと言うことは容易に想像がつきますが、果たして短時間であればどうでしょうか。NASAの見解を中心に紹介します。(Photo by NASA's Marshall Space Flight Center)

宇宙空間は生物にとって厳しい環境

地球の大気は、気温や気圧を維持したり太陽光の紫外線から守ってくれたりしています。しかし、宇宙空間ではそのような大気の保護はありません。そこに無防備の状態で飛び出すと、真空、極寒、紫外線や放射線といったものに直に晒されることになります。

映画『2001年宇宙の旅』で、主人公のデイヴがヘルメット無しで宇宙空間に晒されるシーンがあります。その映画では彼は無事生還しますが、果たして人間は無防備の状態でどのくらいの長さ宇宙空間で生きていられるのでしょうか?

まさにこの疑問に答えた1997年のNASAの記事があります。まず結論から言うと、

十数秒であればダメージは少ない
ただしそれ以上は危険

ということです。では具体的に紹介していきます。

NASAの見解

記事によると、「もし息を止めたりしなければ、30秒ほどであれば恒久的なダメージを受けることはおそらくない」とのことです。スキューバダイビングで深く潜った状態から浮上していく時に息を止めていると肺はダメージを受けます。それと同じように宇宙空間に出た時に息を止めていると肺内の空気が膨張して肺に損傷が出ます。また、耳管が塞がっていると鼓膜にも損傷が起こる可能性があります。

理論上では真空によって即時に損傷が起こるとは考えられていません。これは動物の実験によっても実証されています。体が破裂すること、血液が沸騰すること、体が凍結すること、一瞬で気を失ってしまうこと、これらは全て起こりません。

皮膚や循環器で囲まれているので体が爆発したり血液が沸騰したりすることはありません。宇宙空間はとても寒いものですが、すぐに体から熱が逃げていくことはないので体が一瞬で凍結してしまうこともありません。意識の損失は血液中の酸素が使い果たされた後に起こります。肌が無防備な状態で太陽光の強力な紫外線放射に晒されると、酷い日焼けを起こすかもしれません。

様々な小さなダメージ(日焼け、潜函病、皮膚や皮下組織のはれなど)が、10秒ほどすると始まってきます。しばらくすると酸素の不足によって意識が失われます。体へのダメージも蓄積していきます。そしておそらく1分か2分後には死亡してしまうでしょう。正確な限界は不明です。

補足
別の情報源からの補足です。

血液の沸騰は最終的には起こります。心臓が止まると、小さな血管内の圧力が低下し真空のダメージがより速く進行します。そして体組織が崩れて水分が出てくると、器に入った水が真空に晒されると蒸発していくのと同じように、その時点で初めて血液の沸騰が起こります。

映画『トータルリコール』であるような眼球や体の破裂は起こりません。破裂を起こすための十分な圧力が体の内側にはないためです。

強力な紫外線やX線やガンマ線などによってDNA損傷が起こります。宇宙空間から生還しても後に癌などを発症する可能性があります。

実際に真空に晒された人

1965年、NASAの施設で宇宙服の漏れが原因により誤ってほぼ真空に近い状態に晒されてしまった被験者がいました。彼が意識を保っていたのは約14秒間。それは酸素を使い果たされた血液が肺から脳に到達するまでの時間(体内中の全ての血液の酸素が使い果たされる時間)とほぼ同じです。通常私たちが生活しているような大気圧のある状態であれば数十秒~数分程度息を止めて意識を保っていられますが、前述のように周囲が真空の状態で肺に空気を残していると膨張が起こるので、肺に空気を溜めた状態で息を止めることは出来ません。

宇宙服内は完全な真空にはならなかったと予想されており、室内の圧力は15秒で元に戻されました。被験者は高度15,000フィートと同じ状態の所で意識を回復。後に彼はそのときの様子を報告しています。空気が漏れていくのを感じてその音が聞こえ、意識を失う前の最後の記憶では舌の上で水分が沸騰し始めたのが分かったそうです。

というわけで、無防備な状態で宇宙空間に出ても数十秒以内に宇宙服や船内などに戻れば重大なダメージは避けられるようです。宇宙空間の過酷さを想像すると、改めて大気の有りがたさを感じてしまいます。

参考文献:NASA's Imagine The Universe!, IFLScience, io9