デスバレーの動く石

アメリカ、デスバレーに広がる干上がった大地。ここには数々の岩石が点在しており、その岩石の周りには動いたような跡があります。なぜこのような跡があるのか長年の間謎とされてきましたが、ついにその理由が解明されました。(Photo by Tahoenathan)

石のある場所

その「動く石」はアメリカのカリフォルニア州にあるデスバレー国立公園の「レーストラック・プラヤ」と呼ばれる場所で長年に渡り観測されていました。

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Photo by Uwe Dedering

プラヤ(Playa)と言う言葉は「乾いた湖(Dry lake)」を意味し、その名の通りレーストラック・プラヤは干上がった湖の底によってできた平坦な大地です。その大きさは長さ4.5km、幅2.1kmにも及びます。

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Photo by Mark Weston

雨期には、周囲を山に囲まれたこの場所は薄い水で覆われ内陸湖が形成されます。しかしこの地域は一年の内のほとんどは乾燥した気候が続くので、すぐに水は蒸発してしまい泥のみが残されます。そしてさらに日照りが続くと、最終的に泥が干上がりひび割れた大地が広がることになります。また、時期によっては厚さ2.5~6.5cmの氷で覆われることもあります。

このような環境なので、レーストラック・プラヤに植物は育ちません。

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Photo by Abby Swann

動く石

その干上がった大地には岩石が点在しています。これ自体は何ら不思議なことではないのですが、そのほとんどの岩石に引きずって動いたかのような跡が残されているのです。人間や他の動物によって動かされた形跡はなく、石がまるで自分の意志で動いているかのように移動しているのです。

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Photo by nate2b

この不思議な現象は「Sailing stones(航海する石)」や「Moving rocks(動く石)」と呼ばれ1900年代から観測・研究されていました。

様々な仮説が立てられ、大地の水分が多くなった時に強い風が吹くと滑るように石が動いていくという説や、氷に乗せられて移動するという説などが立てられましたが、現在までそのはっきりとした原因は解明されていませんでした。

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Photo by NASA Goddard Space Flight Center

岩の後ろに残される跡は様々であり、直線のものもあれば途中で曲がるものもあります。

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Photo by Jon Sullivan

石が動くメカニズム

その今まで謎であった石が動くメカニズムがこのたび解明されました。

解明したのは、お互いにいとこ同士であるリチャード・ノリス氏とジェームズ・ノリス氏を中心とした研究チームです。石に取り付けたGPSとタイムラプス写真によって石の動きを観測しました。

2013年の12月、二人は石の様子を見るためデスバレーへ戻りました。その時そこには7センチほどの水が溜まっていました。するとまもなく、彼らは氷の割れる音を聞き石が動き始めるのを見たのです。リチャード氏が「なんてことだ、ジム、今起こってるぞ!」と叫ぶと、ジェームズ氏は急いでカメラを掴んで撮影を始めました。石の動くスピードは分速約15フィート(4.6メートル)でした。

そして更なる研究によって、石は3段階のプロセスを経て動くことが解明されました。

  1. まず乾いた大地に雨が降り水が溜まります。
  2. 次に夜間の冷え込みで水の表面が凍り、翌日の日光でそれが割れ表面に氷の板がいくつか形成されます。
  3. そしてこの状態である程度の強さの風が吹くと氷が動かされ、その氷によって石も押されます。この時、石は柔らかい底の泥に引きずったような跡を残して行きます。

まず最初に必要な条件は雨によって水が溜まることです。その深さは、浮氷ができるために十分な深さでなくてなりませんが、同時に石が露出する程度浅くなくてはなりません。

次に、その溜まった水が蒸発してしまう前に凍らなくてはいけないので、十分な夜間の冷え込みが必要です。

そして次の日の太陽によってその氷が溶けて割れ、いくつかの巨大な氷の板が浅い湖に浮かぶことになります。最後に必要な条件はその氷を押す力のある風です。

石を動かしていた謎の正体は、風によって押された氷ということだったのです。

ジェームズ氏は、もはや謎がなくなってしまったことに切ない気持ちの側面もあったと語りました。

参考文献:LA Times, Washington Post