国際的な研究チームによってコーヒーのゲノムが初めて解読されました。これにより、干ばつ・病気・害虫に強い種を開発でき、風味を高めたりカフェインレベルを変えたりすることもできるそうです。

コーヒー豆

今回解読されたコーヒーの種類はCoffea canephora(コフィア・カネフォラ)と呼ばれるもので、一般的には「ロブスタ」として良く知られている種です。世界で流通している商用コーヒーの約30%がこの種のものです。残りの約70%はCoffea arabica(コフィア・アラビカ)で占められています。

今回のゲノム解読によって、理論上ではコーヒーの風味や香りを操作できるということになります。例えば、コーヒーの味と匂いに関わっているリノール酸と呼ばれる脂肪酸の生成を担っている6つの遺伝子が特定されています。

そういった様々な品種の開発が期待されていますが、その中でも一際注目されているのがカフェインについてです。

コーヒーのカフェイン生成には「N-メチルトランスフェラーゼ」と呼ばれる酵素が関わっています。N-メチルトランスフェラーゼのファミリーは古いものであり、何百万年もの時を経て数え切れないほどの種類の植物の中で様々な役割をこなすように進化・多様化してきました。以前の研究で茶やカカオに含まれるカフェインもN-メチルトランスフェラーゼによって生成されていることが分かっています。そして今回のコーヒーゲノム解読によって、ロブスタ種のN-メチルトランスフェラーゼは茶やカカオのそれとは独立した進化を遂げてきたことが明らかになりました。コーヒーもカカオも同じ酵素によってカフェインを生成していますが、それぞれが違う進化のルートをたどって来たのです。

コーヒー消費者の12%はカフェインレスのものを選んでいると言われています。カフェインレスコーヒーは人工的なプロセスによって加工されたものであるため、コーヒー本来の風味は損なわれてしまっているものが多いです。さらにカフェインを抜く方法には薬品を使用するものもあります。しかし今回のゲノム解読によってコーヒー豆に元々含まれるカフェイン量をコントロールすることが出来るようになり、カフェインを多くしたりゼロにしたりすることが可能になるそうです。天然の風味を持ったカフェインレスコーヒーが飲める日は近そうです。

参考文献:io9, news.com.au