凶悪犯罪と映画やゲームなどのメディアとの関係性は長年に渡って議論されてきました。見る人によってその捕え方や影響が変わってくることは当然の事ですが、それを科学的に研究した例はかなり少ないのではないでしょうか。マウントサイナイ医科大学とNIH Intramural Programの研究者達が行った研究です。

BrickArms Lewis gun and Brodie helmet prototypes
Photo by Andrew Becraft

まず54人の男性がアンケート結果を元に攻撃的な人とそうで無い人の二つのグループに分けられました。

次にそれぞれのグループに映像(映画のシーン)を見てもらいました。映像は一日目には銃撃戦や喧嘩のあるバイオレントなもの、二日目には自然災害で人々がお互いに協力し合う様子を描いたエモーショナルなものが見せられました。その際の脳の代謝活動がスキャンされ、そして5分毎に血圧が測定され15分おきに感想が尋ねられました。

その結果、バイオレントな映像を見ているとき攻撃的な人のグループは眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)の活動が低下していました。眼窩前頭皮質は意思決定や自制をコントロールしている脳の部位です。

そしてその時の被験者達はより鼓舞され毅然とした(inspired and determined)気分であったと語っていて、非攻撃的なグループよりも動揺や不安は少なかったそうです。また、攻撃的なグループの血圧が次第に下がって行ったのに対し非攻撃的なグループの血圧は上昇しました。

三日目には何も映像を見ない状態でただ脳のスキャンのみが行われました。すると攻撃的なグループの被験者達は、特に何もしていない時に活性化する脳の部位のネットワークに高い活動が見られたのです。研究者達によると、このことは攻撃的な人と非攻撃的な人では脳機能マップが異なっているということを示しているそうです。

研究を率いたネリー・アリア・クライン氏は、個人が周囲の環境に対してどういう反応をするのかはそれぞれの脳に依存していると語りました。彼女はこの研究結果が教育者達の助けになることを期待しています。

個人的には、今回の研究結果はゲームや映像作品が犯罪に繋がっているという論調に対して否定も肯定もするものでは無いと思います。

Exposure to violence has a different effect on people with aggressive traits

攻撃的な素質の人がバイオレントなのものへ晒されると(そうでない人と比べて)異なる影響を示す

と結論されていることからも分かるとおり、バイオレントなメディアの影響はあくまでもそれを見る人の素質によって変わってくるということです。これ自体は特別驚くべき結果では無いかもしれませんが、いわゆる「人それぞれ」ということを実証的に示したと言う点で重要な研究であったと思います。

参考文献:Mount Sinai Medical Center - newwise