見出しの通りですが、科学誌 PLOS ONE にて「老年においての嗅覚機能障害は5年以内の死亡を予知している(Olfactory Dysfunction Predicts 5-Year Mortality in Older Adults)」と題された記事が発表されました。

研究では、全米社会生活健康加齢プロジェクト(NSHAP)の参加者である57~85歳の3,005人の成人を対象に調査されました。

まず2005年から1年間の間、シカゴ大学のジャヤント・ピント氏達は全ての被験者たちにバラ・革・魚・オレンジ・ペッパーミントの五つの臭いを嗅ぎ分けるテストを行いました。

そして2010~2011年の間に、研究者達は出来るだけ多くの同じ被験者に対し同じテストをもう一度行い、さらにこの二回目のテストが行われるまでの5年間の間の死亡率を調査しました。

その結果、この二つのテストが行われる5年の間に全体の12.5%である430人の人が亡くなっていました。その内、嗅覚が完全に失われていた人の死亡率は39%、嗅覚が減退していた人の死亡率は19%であったのに対し、通常の嗅覚を持っていた人の死亡率はたった10%だったのです。つまり、嗅覚が完全に失われていた人の死亡率は正常な嗅覚の人の死亡率の約4倍であったという事です。

年齢・性別・人種・教育レベル・資産などによる死亡率の偏りを考慮しても、嗅覚が失われた人の死亡率が高いという傾向に違いはありませんでした。

そして、無嗅覚症は癌や心肺疾患よりもずっと正確に5年の間での死亡を予知していたのです。無嗅覚症よりも正確に死亡を予知していたのは重度の肝臓障害のみでした。



一般的な死亡要因とアノスミア(無嗅覚症)の5年間の死亡確率を比較した図。
上から順に無嗅覚症、嗅覚減退症、肺気腫/COPD、癌、心臓発作、卒中、糖尿病、心疾患。
無嗅覚症が平均で最も高いリスクファクターとなっていることが示されている。
(Photo via PLOS ONE)

研究者達は、嗅覚の損失そのものが死亡の原因である可能性は低く、それはただの前兆であると考えています。残念ながら、ピント氏らは430人の直接の死因が何であったのかは調査していませんが、それらを調べていく価値はあると語っています。

参考文献:PLOS ONE, theguardian